ビルマ・アヘン王国潜入記

ビルマ・アヘン王国潜入記
高野秀行 1998 草思社

内容、カバー折口より

 中国雲南省と国境を接するビルマ・ワ州。世界最大のアヘン生産地にして、反政府ゲリラ・ワ軍の支配区。これまで中国人以外のいかなる外国人も受け入れたことはなく、そこに住む少数民族ワ人は、かつて首狩り族として知られ、今ではビルマ最強のゲリラ兵として政府軍から恐れられていると言う。
 地球上に残された最後の秘境とも言うべきワ州入りに成功し、辺境の村に半年間にわたって滞在した著者が、アヘンゲシ栽培に依存して生きる農民の日常生活をリアルに描いた希有な記録である。
 アヘン収入をめぐるワ軍幹部の腐敗の構造や、ワ州に多大な影響力を持つ中国との複雑な関係、そして135の少数民族を抱えて「東南アジアのユーゴスラビア」状態にあるビルマの知られざる現実をも明らかにした迫真のインサイド・レポート。

感想

 全世界のアヘンの四割ほどを生み出しているとされるビルマ・シャン州。シャン州内にあるワ州にはビルマ政府の意向は及ばない。ワ州連合軍という反政府ゲリラの支配下にあるからだ。ワ州のように、麻薬から得られる利益で一定以上の大きさの地域が自立しているところはないp10。
 著者は好奇心から、この「善悪の彼岸」で人々がどのように暮らし、どのようなことを考えているのか探ろうとする。そのため、ワ州の村に滞在し、村人と一緒にケシを栽培し、アヘンを収穫することを思いつくのだ。本書はその記録である。
 善悪の彼岸はどうであったのか。アヘンが基幹産業であること以外、私たちと同じだと著者はいう。
 ビルマ少数民族の視点、ユーモアあふれる著者、素朴で魅了的な村、コメディのような著者と村人の交流。表紙は、ケシ畑に満面の笑みをたたえ、軍服にアサルトライフを持つ三人の男性。真ん中の東洋人が著者だろうか。いい写真だ。