ハイエク 知識社会の自由主義

ハイエク 知識社会の自由主義
池田信夫 2008 PHP研究所

内容、カバー折口より

一九三〇年代、ほとんど一人で社会主義ケインズ主義と対決したハイエクは、サッチャーレーガン政権が成功したことで、経済学だけではなく、世界のあり方をも変えた。本書では、市場経済を全面的に信頼したハイエクの思想の今日的意義を明らかにする。彼の思想は、現在の脳科学、法体系、知的財産権、インターネットを理解する鍵を、私たちに与えてくれるのだ。現実がハイエクに追いつくには二〇世紀末までかかったが、彼の思想は、新しい社会秩序のあり方を考える羅針盤として、いま不動の位置を占める。

雑感

○本書を読む限り、ハイエクの思想を超簡単に書くとこんな感じだ。


 まず、複雑な社会やシステムでは、適切な目的を持ったり、最適な計画を立てることはできない。
 なぜならば、複雑なシステムのもとであっては、誰であっても、全ての情報を得ることはできないし、またそれに近いものを収集しようとすると莫大なコストと尋常ならざる手間がかかるからだ。さらに、不確実性も高い。
 よって、複雑な社会やシステムを運営するにおいては、政府が計画し市場に介入するのは、無理がある。政府は介入をできるだけ避け、市場経済にまかせるべきだ。市場が自動的に働かせる機能が、最も効率の良い方法である。


○ それにしても本書は読みにくい。理解しにくい。ハイエクの思想が分かりにくい。まるで、ハイエクの思想を知っている人向けの本のようだ。新書なんだから、もっと噛みくだいて書くべきだ。
 さらに、ハイエクの思想がなんだかめちゃくちゃに並べられているようにみえる。順を追って丁寧に説明してほしいなあ。
 僕は進化生物学について多少詳しいから、ハイエクの思想を進化生物学にからめて説明しているところは理解できた。でも、進化生物学をよく知らない人は理解できないだろうなあ、と感じた。


 つまり、著者は説明が下手なのである。下手くそなのである。


 ハイエクの思想とはどんなものなのか?
 その特徴は?
 歴史に与えた影響は?
 現在それは、どのように評価されている?
 反対意見は?
 著者である池田はハイエクをどのように評価してる?
たぶん、本書を手に取った初学者は上のようなことが気になると思うが、さあ、下手くそだなあ。解が見えない。もっと整理しろよ。初学者である普通の読者にとって時間の無駄だ。


○ 前から思っていたけれどリバタリアンの現実認識は一面的で単純過ぎると思う。現実はもっと多面的で複雑だ。本書の主張も、一面的だなあ、と感じるばかり。多少は、反対意見をのせて、それを論破してすべき。説得力がない。