真剣師 小池重明 (“新宿の殺し屋”と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯)

真剣師 小池重明 (“新宿の殺し屋”と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯)
団鬼六 イースト・プレス 1995

内容、カヴァー折口より

真剣師 小池重明とはこんな男だったーー
賭け将棋にめっぽう強く、新宿の“殺し屋”“プロキラー”とも呼ばれた。連続二期アマ名人となり、特例でプロ棋界入りの話も出たが、寸借詐欺事件を起こし、アマ・プロ棋界から追放された。女性関係にだらしなく、人妻との駆け落ち歴も三回。葬儀屋、運転手、土方稼業など職を転々とし、放浪癖と逃避癖は生涯抜けることがなかった。子供のころは貧民窟とバクチ場のなかで育った。

感想

 将棋のアマ名人であった小池重明の人生を、その友人が著した本。
小池はアマとはいえ、プロをも破るなど、破格の強さを持っていた。
しかしのその一方、酒癖が悪く、女にもだらしない。職場の金を持ち出して仕事から逃げ出すことも、幾度となく繰り返す。少しでも金を得たら、夜遊びと博打につぎ込む。私生活はめちゃくちゃ、常識という感覚は破綻していたのだった。
ただ、その将棋の圧倒的強さと、破滅的な私生活、そして金を出す人には素直だったことから、多くの人に嫌われたのと同時にまた、多くの人に好かれたようだ。


 天性の才能に恵まれた男の、破天荒な人生劇としては、まあ、おもしろいかも知れない。
小池は多くの人に感嘆と迷惑を与えたわけで、確かに、多くの人に「何か」を残したのだろう。実際こうやって、その人生を綴った本まで出版された。
けれども、彼がそれぞれ関わった人に残した「何か」って、なんだろう? 彼ほどの才能があるのなら、もっと社会に意味のあるものを残せたのではないか?


 それとも、、、小池重明の人生を読んで、そう思ってしまった僕は野暮なのだろうか。