趣都の誕生 萌える都市アキハバラ

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趣都の誕生 萌える都市アキハバラ
森川嘉一郎 2003 幻冬舎


【出版社のウェブサイトより】
いつの間にかアキハバラ全体が巨大な「個室」になっている! たどり着いてしまった前代未聞の未来風景の出現を、新世代の論客が鮮やかに解き明かすまったく新しいオタク論、都市論の登場!!


【雑感】
オタクの町、秋葉原やその成立について詳細に研究した本。すごくおもしろい。まじおもしろい。個人の趣味が都市空間まで変容させることになったという指摘は、全くその通りだと思う。そういう意味で著者は、アキハバラはこれまでの都市とは違うと主張するのである。


【メモ】
「個室に隠匿されてきたようなオタク趣味が、公共空間にかってない密度で露出する。個室が都市へと巨大に拡大された姿が、ここにある。」p3


秋葉原のオタク街化が都市史的に前代未聞なのは、それが大企業による戦略的開発によるものではなく、人格の地理的な偏在によって発生したものだからである。これが《趣味》を、都市の構造にまで台頭せしめた。」p7


「日本中の都市が均質化され、個性を失ったと言われて久しい。ところが秋葉原では、旧来場所の固有性を決定してきた諸構造とはまったく異なる仕組みで、自然発生的に、新たな個性を街が獲得し始めたのである。」p16


「萌える」について。例えば、「アルプスの少女ハイジ」のクララ萌えといった場合、クララが好みだというほかに、陰りのある美少女が好きだという、自らの趣味嗜好を表明していることに力点がおかられる。特定のキャラクターやキャラクターを構成する特定の部分的要素に惹かれ、好みを感じるということである。
P29


秋葉原で売られる主要商品は次のように変遷してきた。家電→パソコン→オタク系
パソコンマニアは、マンガ・アニメ・ゲームも好む傾向がある。この“趣味の構造”秋葉原を変化させた。
第一章
→テナントデータも同時に示していて、それ自体もなかなか興味深い。


ハイテク機材が趣味に関わるほど、部屋がクリーンルームから遠ざかる傾向がある。オタクは空間に対する関心が低い。
P183


秋葉原の変化はコミュニティ・オブ・インタレスト、すなわち趣味の構造による集合である。インターネットの場所(サイト)の成り立ちを、現実の都市が模倣し始めているのである。そしてこの点が、決定的に新しい。本章ではそこに、焦点を合わせてゆきたい。」p235


都市の構築は
「官」→「民」と移ってきた。それに対し秋葉原は「個」である。
p250
→もっとも重要な結論。秋葉原以外の都市は、例えば渋谷のように、商業資本が中心となって都市を形づくった。しかし秋葉原は違う。秋葉原は、人々の趣味によって、(同じ趣味を共有する人々が集まることによって)、できたというのである。