「無執着は、ブッダの最も基本的な教法なのです。」

「無執着は、ブッダの最も基本的な教法なのです。ブッダのほとんどの説法は、この無執着にいきつくと考えてよいでしょう。なぜならば、ブッダの人間観は、欲望を中核とした人間観なのです。人間の人格の中心にはやむにやまれぬ生存への執着があり、それを中核としてさまざまな欲求をのばし世界像を形造っています。この世界像は欲望によってゆがんでいます。したがってブッダの説くところは、欲望をコントロール(制御)して、そのゆがみを正さなければなりません。それには、執着を挫いて欲望から自己を自由に開放しなければなりません。後述する『無我』もそうですが、無執着が強調されるのは当然のことであるのです。」p13


ブッダの人と思想』(中村元・田辺祥二、1998)