エンダーのゲーム

エンダーのゲーム
オースン・スコット・カード 野口幸夫訳 S62 早川書房


【カヴァーより】
地球は、恐るべきバガーの二度にわたる侵攻をかろうじて撃退した。捕らえた人間を情け容赦なく殺戮し、地球人の呼びかけにまるで答えようとしない昆虫型異星人バガー。彼らとの講和は決してありえないのだ!バガーの第三次攻撃にそなえ、優秀な指令官を育成すべくバトル・スクールが設立された。そこに入学したエンダーは、コンピュータのシミュレーション・ゲームから、無重力戦闘室での模擬戦闘まで、あらゆる訓練で最優秀の成績をおさめるが……!?天才少年エンダーの苦難にみちた成長を、スリルと興奮にみちた筆致で描き、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞に輝く傑作長編。


【雑感】
かなり面白かった。
来るべき次のバガー戦争のリーダーとして訓練される主人公エンダーの孤独と苦悩に満ちた物語。
エンダーの兄、ピーターは残虐過ぎ、姉のヴァレンタインは優しすぎた。特別な措置として第三子の出産が認められる。それが高い知性と高い統率力を持つエンダーだったのだ。彼は生まれながらにして、人類のリーダーとしてバガーと戦う宿命を負う。バトルスクール内での訓練は厳しいものだった。エンダーは、自身に対する嫉妬や迫害を乗り越え、またバトルスクールの教官たちが設定した理不尽な要求を次々とクリアしていく。


自身に残る、残虐な兄ピーターの面影におびえながらも、人間らしく生きようと悩む姿は新鮮だった。


主人公エンダーをはじめ、兄のピーター、姉のヴァレンタイン、教官のグラッフ大佐、それぞれ天才だけれど、人間らしくていい味を出している。


エンダーは、本書最後の方でも齢、11歳。いくらなんでも若すぎると思うけれど、子どもの柔軟性に私たちは神性すら感じるときがある。多分にそういうのを踏まえてのことだろう。


天才の成長と苦悩の物語だとか、ネット言論の影響力および可能性を予見しただとかいろいろ言える本書。だけど、僕にとって強烈だったのはそのラストだった。これまでの流れをぶった切り、物語は急展開する。


ものがたりは、生あるものすべてへの愛をみちびき、そのまくをとじる。
「死者の代弁者」。死者の「よきことすべとと邪なることすべて」を語る者。
物語のラストで、滅ぼしたバガーの女王と、幼いころ恐怖の対象だった兄ピーターの「死者の代弁者」になるエンダー。


こういう、物語の流れをぶった切るようなラストは賛否両論だろう。でも僕は、その強烈な印象から、このラストを評価したい。


《20081004の記事》