ヘルマンとドロテーア

ヘルマンとドロテーア
ゲーテ 国松孝次訳 新潮社 S27


【裏表紙より】
フランス革命に続く世界史の動乱期のある夏の日、ライン地方をフランス軍に追われた避難民たちが通り過ぎてゆく。彼らに救援物資を届けに行った富裕な市民の息子ヘルマンは、そこで避難民の娘ドロテーアと出会う…。新しい秩序をうちたて、平和な生活を建設しようとする若者を、悠々たる余韻を響かせる叙情詩の中に描き、「若きウェルテルの悩み」と並び称されるゲーテの名作。


【雑感】
バイト先の先輩だった、M先輩が薦めていた本。仕事をずっと教えてくれて、そして一緒に仕事を覚えていった人。彼が薦めてくれた本ということは、僕にとって特別な意味をはらう。


とても美しい恋の散文(原著は叙事詩)。リアルな小説というわけではなく、比較的人間のできた分かりやすい登場人物たちが繰り広げる形式的な劇といった感じ。


シンプルで美しい話だけれど、それをどう見るかは人それぞれだろう。各要素が極限の緊張をもって織り合わさっているわけではないから。


「あっさりしたディティールに、“人間の在るべき願い”が真摯に込められた安定感のあるガラス細工。」
M先輩に「ヘルマンとドロテーア」の感想を求められたとき、僕はそうこたえたい。


《20080722の記事》