水煮三国志

水煮三国志
成君憶 著 泉京鹿 呉常春 訳
2005 8 1 日本能率協会マネジメントセンター


 かの有名な三国志を、時代設定を現代にし、パロディったビジネス小説。大企業率いる曹操、中堅企業率いる孫権ベンチャー企業率いる劉備がカラーテレビ市場をめぐって激突する。


 その中に、たくみに(強引に)ビジネス上の問題を入れ込み、どうすればうまく解決するかを提示した啓発の書を目指している。例えば、企業の心得、周りの人から好かれるにはどうすればいいか、人材管理の方法、社内恋愛のあり方、正しい報酬の与え方、権限委譲の方法、マーケティングの大切さ、企業合併についてetcetc。


 とにかく面白かった。三国志の好きな人にはたまらないと思う。劉備の躍進をどうパロディるか?劉備の人生はなんとも表現しづらい。彼の人生、生き方は乗っ取りandうだうだ型だ。それでいて英雄ということになっている。なかなかパロディるのに手を焼いただろう。私は「劉備が高校三年生の、厳冬の晩のこと」という文章だけでふきだしてしまったが。


 それに、ビジネス上の問題の入れ方も強引で面白かった。強引だから面白かった。特に三顧の礼の後、劉備の下に単身赴任する諸葛亮孔明をその妻阿丑が引き止め、しばらくして元気に送り出すシーンは傑作だ。残された妻の寂しさを理解しいたわれとでも言いたいのかなあと思って読み進めると、その妻阿丑は「経営者をマネジメントしなければならない」などと夫孔明に説きだす。え〜〜〜むちゃくちゃ強引(笑)。最初寂しがってたじゃん、阿丑さんよー。別にお前が経営者をマネジメントせよだなんて語らなくてもいいんじゃない。ほかの人が語れ、ほかの人が(笑)


 本書はあくまでビジネススキルの習得に重点が置かれているため、人物描写やストーリーの細かい踏み込みに著しく欠けている。それはそれで目指すものがそうなんだから仕方ない。でも純粋なパロディーもぜひ読みたいと思った。すばらしい発想をもっと別に生かせず眠らせるのはモッタイナイ。


《20060316の記事》