東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ
遙洋子 2000 1 20 筑摩書房


 タレントの著者が、東大の上野千鶴子女史に社会学を学びに行った時のエッセー集。


 著者は、テレビの討論なので男性から、理不尽な意見に押し切られることがあり、どのようにして討論すれば(相手を言い負かせば)いいか悩んでいたという。そこで最高学府の有名フェミニズム論者の下に本格的に弟子入りしたというわけだ。


 その著者に上野千鶴子はかく言う。
「相手にとどめを刺しちゃいけません。あなたは、とどめを刺すやり方を覚えるのではなく、相手をもてあそぶやり方を覚えて帰りなさい」
この人とは討論したくない(笑)


 最近よく思うのが、相手を納得させる難しさだ。多くの知識と何よりその問題に対しどれだけ責任ある取り組みをしているかが問われるだろう。ろくに情熱も持たず、ある問題について相手を納得させようとしても到底不可能なのだ。時の感情で意見を言っても、上野千鶴子やこの本の著者にかかれば簡単に論破されてしまうに違いない。


 この本は上野千鶴子のゼミの様子などに触れられている。それを読んで、その世界は自分たちの世界とは大いに異なっているらしいということを痛切に感じた。たぶんにその感情には幾分の皮肉もある。彼らの努力はいつか社会に還元されるときが来るのだろうか。それともただの机上の空論を転がしていることになりはしないだろうか。


 もっとも、文系の学問なんてそんなものなのかもしれない。それに、社会に役立つものだけが学問なわけでもないしね。


《20060309の記事》