クルーグマン教授の経済入門

クルーグマン教授の経済入門
ポール・クルーグマン 山形浩生訳 日本経済新聞社 2003


【「BOOK」データベースより】
楽しくわかりやすいユニークな著作で知られる、ノーベル経済学賞・最有力候補、初の決定版テキスト。アメリカが抱える経済問題を素材に、舌鋒鋭く「俗説」を斬り捨て、その成功と失敗の本質を解説。番外編「日本がはまった罠」を加え、読みやすいくだけた訳文でも話題となったベストセラーを文庫化。


【メモや感想】
☆「経済にとって大事なことというのはーーつまりたくさんの人の生活水準を左右するものはーー3つしかない。生産性、所得分配、失業、これだけ。これがちゃんとしていれば、ほかのことはまあどうにでもなる。これがダメなら、ほかの話も全滅。それなのに、ビジネスとか経済政策は、こういう大きなトレンドとはほとんど関係がない。」p27


☆非常に分かりやすく、読みやすい文体。訳文はそうであるし、また、原文もそうらしい。どんなかんじかというと上の引用のような感じ。専門用語を普通に使われる言葉に直すだけでぐっと読みやすく、親しみやすくなる。訳者による後書きには本書のこの点について説明している。
貿易赤字の大幅拡大が重要課題として浮上してきた」

貿易赤字がすごく増えて、それが大問題になってきた」
とか
「日本の貿易慣行は多大な反発に直面することになった」

「日本の貿易のやり口は、すっごい嫌われちゃったんだ」
と言い換えているだけなのだという。
たったそれだけで、ものすごく読みやすくなっている。初学習者でも、頭に入ってくる。
これは大いに大いに見習うべきこと、参考にすべきことだと思った。


☆経済のいい勉強になる。もっとも、経済の専門家でない僕は、本書の学術的価値を評価したり、本書の批判点に思い至ることが出来ないが。


☆僕を含む一般人の多くは、経済のことをよく分かっていない。本書では、インフレや貿易赤字は単純に悪いとは言えないことを、丁寧に説明していた。一方、インフレや貿易赤字を印象で批判している言説を非常によくみかける。


☆本書を読んでいて、経済問題には、「これだ!!」というような解決策がないのではないかと思った。例えば、インフレを抑えようとしたら失業率が上がったり、失業率を下げようとしたらインフレに傾向になっちゃったり。確かに、万全の解決策があったら、とっくの昔に経済問題なんてなくなっているのだろう。う〜ん、あちらを立てればこちらが立たず、こちらを立てればあちらが立たず。経済問題は難しい。


☆本書は、分からないことは分からないと「はっきり」あるいは「ざっくばらんに」きちんと表明しつつ、根本的なところに重点をおいて説明している。とても好感と信頼がもてる姿勢だと思う。