「見上げた空におちていく」という言葉と体感

この前、2ちゃんねるまとめサイトで、秀逸なタイトルをあげろ、みたいなスレのまとめをみた。
小説や漫画、映画、楽曲などの、ひと味ひねったタイトルが並んでいたように思う。なかでも多かったのはエロゲのタイトルだった。


そのなかに、
「見上げた空におちていく」
というものがあった。
これもエロゲのタイトルらしい。


そんなことはどうでもいい。
僕はこの言葉をみたとき、まさに、「見上げた空におちていく」という体感を得ていたのである。


「見上げた空におちていく」
なんてすばらしいタイトルだろう。
○地に足のついていない不安
地に足のつかないことからくる不安。墜ちることからくる速さではなくて、上下が逆転したときに一瞬生じる、不安定な浮遊感がそこにある。
○世界の反転
見上げていたはずの世界。見上げていたはずの視線。しかし、世界は一気に反転し、今まで見上げることしかできなかった空の世界へ「おちていく」。「空におちていく」ことによって、君は空を得ることができるかもしれない。しかし、空を得ると同時に、いつ地に足のつくか分からない不安、あるいは永遠に地に足のつかない恐怖もまた引き受けなければならないのである。
○希望の「空」から虚無の「空」へ
空は様々なものを体現している。空は、君のいる地上に比べ圧倒的に広い。地上がごたごたしているのに比べ、りんと澄んでいる。君は希望を胸に、空を見上げたかもしれない。しかし空は、広くて、澄んでいるのと同時にその一方、ほとんど何もない虚無なのである。地上がごたごたしているのに比べ、広くてりんと澄んだ、虚無なのである。君は虚無を望んでいたのかもしれないが、突然それへとおちていく驚きから、急に虚無への怯えを感じるだろう。
○「空へ」「おちていく」じゃなく、「空に」「おちていく」
空は方向としての意味だけではなく、場所という固有の意味をはらむのである。


○深呼吸しながら口を結んで空を「見上げ」れば、誰でも心が「空におちていく」。