「平沢進」の薦め

 知ってる人には言わずもがなだが、はっきり言って平沢進は非常に異質だ。音楽提供の方法、ライブ、歌詞、楽曲、etcetc。彼の魅力はそこに根ざしているといってもよい。もっとも、ファンは彼の「異質であること」自体に魅了されているわけではないだろう。純粋に平沢の提供する音楽が好きなだけだ。けれども、やはり初めて彼の音楽を聴いた時、そして間をおいて彼の音楽を聴いた時、その異質さに心がとらわれないわけではない。


 「平沢進」の特徴は何よりその声の魅力だ。音域が広く、特に高温がとても美しい。これほど魅力的な声の人はまずいないとも思う。普通、私たちがあるアーティストに惚れるとすればどこをもってだろうか?曲調?歌詞?ビジュアル?それとも声?
 もちろんその総合的な組み合わせの妙、というのがもっとも一般的だろう。だが私における平沢進は、圧倒的に、その美しくミステリアウスな声なのだ。


 楽曲においても他のアーティストにはあまりない魅力がある。それは、伸びやかなファルセットやバカコーラス(バカみたいに何度も繰り返すコーラス)の多用だ。むしろこれらがないと寂しい。っていうか、一度聞くと忘れらんない。いや、みんな聞けー(笑)。絶対受けるから。「なんじゃーこりゃー」って。誰か、修学旅行のバスの中や学校の掃除時間に「Kingdom」とか「Nurse Cafe」を流してみてくれないかな。「LAB=01」の方がもっと良いかもー。周りが騒然となります(笑)。


 歌詞にもまた不思議な魅力がある。実際、意味がほとんどわかんない歌詞も多い。だが、その意外につぐ意外な言葉の組み合わせがおもしろいのだ。彼の詩はイメージしにくい。最初に、想像力を働かせて歌詞をイメージする時は苦痛ですらある。けれどもそれを乗り越えた時、そこには別次元の、美しい、ときに哀しい世界が広がっているだろう。そしてそれは、別次元の世界であるにも関わらず、一方でこの世界の一面をはっきりと照射しているのだ。


 ここで、私の好きな歌詞を一曲だけ掲載したい。
 

 ルベド(赤化)
 見よ赤色 果てない夕日の色合いで
 OH 見よ赤色 止まない花の輪唱で


 沈黙は荒涼の庭を守る番人のよう
 遠くから聞こえた難関に泣く声に
 花は咲いて庭に惜しみなく
 黄金の伝説を万全なほどにキミに見せて


 饒舌に豊饒の庭で眠る老父の夢に
 生まれたあの日の完全な歌聞こえ
 花は枯れて庭に淀みなく


 黄金の旋律を旋風のように吹き上げて
 見よ赤色 果てない夕日の色合いで


 OH 見よ赤色 止まない花の輪唱で
 OH 見よ赤色 果てなく回る輪の上で
 OH 見よ赤色 朽ちない園の色あいで


 悠々とたなびく草はキミを象るよう
 遠くから届いた断崖に立つ影に
 花はそよぎ雨の潤いを呼ぶ


 黄金の時は来て
 万全なほどにキミに降る
 見よ赤色 果てない夕陽の色合いで


 OH 見よ赤色 止まない花の輪唱で
 OH 見よ赤色 果てなく回る輪の上で
 OH 見よ赤色 朽ちない園の色合いで




 Were you able to image this beautiful world in a head?


《2006/02/13の記事を転載》