無題
彼は失われてしまった僕を知っていた
意識という名の濾過装置に沈殿した、あの時の僕を知っていた
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濾過された水のように純粋に見える僕の意識は、無色透明無臭で、水滴を垂らすと、秩序だって同心円状の波紋が広がる
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「あの時、おまえ、めっちゃAを恨んでたじゃん」
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そう
あの時僕は、Aをめっちゃ恨んでいて、その思いを彼にぶちまけた
さんざんに言ったから、彼もその事を覚えていたに違いない
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そんな激しい思いも、時とともに沈み、やがて忘れた
濾過装置の上澄みは、キレイになった
ただ、その思いは単に沈殿していただけだったのだ
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彼が僕に投げかけたその言葉は、僕の意識を激しく撹拌した
上澄みはまた濁り、感情のエントロピーは増大した
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僕という意識を、濾過装置としてみるならば、他と比べてそれは優れているだろう
いったん水が濁っても、上澄みはすぐにキレイになる
事実、その時もだった
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けれども僕は、落ち着いた気持ちになってイライラしながらこう思ったんだ
(あのころの僕が愛しい)
(なるほど、僕はもっと人間らしくなるために、Aに必ず復讐しなければならないんだ)
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そして僕は、そのため計画を練る