ニューシネマパラダイスのテーマ曲を聴きながら

白銀の戦闘機が青い世界から青い世界へと墜ちてゆく。

それは太陽の光を受けて、痛いほどまぶしい光を反射させた。

やがて、白銀の戦闘機から、ミサイルポッドが離れる。

そのあとすぐに、機銃も離れ、主翼も離れ。

無重力空間でバラバラになるよう、静かに、かつ風を切りながら散開していった。

ニューシネマパラダイスのテーマ曲に合わせるように、ぽろんぽろんとパーツが離れていく。

そしてキャノピーが離れ、パイロットが露わになる。

女だ。

まっ黒なパイロットスーツを着た彼女は、ゴテゴテとした機械をつけていて、それをゆっくりと崩壊させながら、飛行機と一緒に真っ逆さまに墜ちてゆく。コクピットからのぞいたばかりの彼女は、人工呼吸器のような黒いマスクをつけ、胸にも背中にも、真っ黒な装置を背負っていたけれど、今はもう、それらも全て彼女から離れている。

彼女は、白銀の戦闘機や、かつて自身に付いていた真っ黒な装置から少し先行して、墜ちてきているようだ。

僕は、彼女は身軽になったんだなあ、って思った。

〈その時、一瞬、確かに彼女と目があう。〉

けれどもその目には、蒼い空しか映っていなかった。

彼女を蝕んでいた機械はすべて分離したけれど、心臓も肺もない彼女は、地を這って生きていくことはもうかなわない。

そもそも、あの手術をしたとき彼女は、地べたを這いずり回って生きていく代わりに、不自由な命と、それでもやっぱり自由な空を手に入れたのだ。

やがて彼女は、碧い海にポトッと落下した。

小さな水しぶきが上がったかと思うと、その上から白銀の残骸がバタバタと墜ちてきて、辺り一面、真っ白になった。

彼女の遙か上空では、それでもやっぱりなお、敵と味方のたくさんの機影を踊らせた、彼女の国の爆撃機連帯が飛んでいく。たくさんの死を積んだ船は、敵国首都、ファーバンティへと向かった。