潜水艦の戦う技術 現代の「海の忍者」――その実際に迫る

潜水艦の戦う技術 現代の「海の忍者」――その実際に迫る
山内敏秀 2015 SBクリエイティブ

内容、背表紙より

国土を海に囲まれている日本は、輸出入の99.7%を船に頼っており、海を自由に利用できるか否かは国の存立にかかわります。日本が海を自由に利用することを邪魔しようとしたり、日本への侵略を企てるものによる海の利用を拒否する役割を果たすのが潜水艦です。潜水艦を運用する国はアジアでも増えてきています。また、アメリカやロシア、中国などは核弾頭を装備した弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦保有し、核抑止力の重要な柱としています。

感想

日本の最新型潜水艦「そうりゅう型」が、オーストラリアの次期潜水艦の有力候補となったことは記憶に新しい。それを推進していたアボット首相が選挙で敗れたため今後の雲行きはあやしいが、このニュースのなかで、原子力でない駆動力をもった潜水艦のなかで、「そうりゅう型」が高い評価を得ていることを知り、本書を読んでみた。

潜水艦も、他の兵器と同様、膨大な研究と莫大な資源の果てに、ある方面に極端に特化しているがゆえの美しさがある。本書は構造から歴史、戦闘方法にいたるまでの幅広い視点から潜水艦について簡易にまとめている。図版や写真が豊富で読みやすく理解しやすい。

勉強になる本。本書から、敵を特定するために「音」を収拾していることを知った。潜水艦にしろそれを援護する水上艦にしろ、実際の戦闘に備えて普段から綿密な準備をしているのだ。

メモ

・潜水艦の最大の武器はその「隠密性」。潜水艦は「その脅威を排除するために、相手方に膨大な資産と努力を強いることができる」

ディーゼルエンジンを搭載した潜水艦は現在、ディーゼルエンジンで発電、充電しておき、その電気で推進器を回す。
ディーゼルエンジンはうるさいので。

ディーゼルエンジンを動かすには空気が必要。その際、空気を取り入れるための拾気筒を水面に出す。この「スノーケル」時は敵に見つかりやすい。
この弱点を克服するため、空気を使わずに充電できるシステム、AIPが登場。燃料電池スターリングエンジンで発電するのが主流。

・海水中の音の伝わり方は、音速や水の密度、温度、塩分濃度で変化。潜水艦はこれに留意しながら敵の発する音を利用する。

・潜水艦や対潜水部隊が、目標を発見する主たる手段は音を媒体とするセンサー(=ソナー)。

・潜望鏡を利用できない場合は、敵の推進器が水を切る音から回転数を割りだし、常日ごろから収拾している情報とつき合わせて敵の速度を推測し、攻撃する。