阿蘇神社

おすすめ!
阿蘇神社
阿蘇 惟之 編 2007 学生社

内容、出版社ウェブサイトより

阿蘇山を祭る肥後国一の宮阿蘇十二神の発生、数々の神話・伝説や古式を伝える特殊神事・神饌、阿蘇国造と阿蘇宮司家など、謎を秘めた阿蘇神社のすべて!

感想

阿蘇神社の宮司が編纂したもので、阿蘇神社周辺の地理や祭っている神々、成り立ち、歴史、神話、伝承、祭り、社殿の変遷などがまとめられている。阿蘇神社の歴史を知る上で勉強になった。これらの知識をえた上で阿蘇神社や阿蘇を散策すれば、また違った目で風景を見ることができると思う。
由緒ある神社は、ぜひこのような本を、市民が手に取りやすい形で世に送り出していただき、土着の信仰の保全に努めてほしいなあ、と思った。

神道の魅力の一つは、中央神話にとりこまれるかたちであっても、各地方土着の信仰が残っている点にあるのだから。

阿蘇神社のたどった歴史はけして阿蘇神社固有のものではない。
自然信仰と祖先信仰の融合。地元の國造との関係。中央(朝廷)からの援助。信仰の衰退と神域の減少。仏教との融合。大名による援助。江戸時代から続いていく政府による働きかけ。などなど。

多かれ少なかれ、他の神社も似たような歴史をたどっている。その点からすると、阿蘇神社の歴史を詳細に知ることは、他の神社の歴史を紐解いていくうえでたいへん役立つのだ。

メモ

○「自然の造化とその営みは、人力の及ぶところではない。阿蘇は人を越えた自然の働きを耳と目に実感できるところである。かつて人がこの地に訪れた時、そこに神を見た。この地での人の営みは、神を怖れ、神を崇め、神の恵みを求めるとともに、新しい神を各地に見いだすことで支えられてきた。阿蘇は、神と人が自然を介して向かい合っていることを悟らせる場でもある。」p14

○「毛野に鎮座する国造神社は、古代の阿蘇君にとっては祖先神であり、その地の開発神でもあった。」p27

○(11世紀ごろに、祭る神が3神から12神に増加。中央政府からの援助が減ったため、地元の氏神を習合することで金銭上の問題を解決しようとした、と考えられる。)p40

○(阿蘇神社が12神体制をしき、地域社会の団結による自立を重視して、火山信仰を軽視していたあいだ、仏教の僧侶たちが山上で修行をし火山信仰を支えた)p50

○(阿蘇神社のトップである大宮司は中世、阿蘇神社のある阿蘇谷ではなく、開発の進んでいない南郷谷を本拠地にした。)p62

○(阿蘇の噴火口は神霊池といい、異変があれば九州の太宰府から朝廷に報告され、阿蘇山への奉幣・読経などが行われた)p143

○(現在の主要な社殿は、細川藩の再興によるもの)p183