淮南子の思想 老荘的世界

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淮南子の思想 老荘的世界
金谷 治 原著1959 講談社

内容、カヴァー裏より

漢の武帝の頃、淮南の地を治めた淮南王のもとには大勢の学士食客が集まり、数多くの著作を残した。2000年後の今日に伝わる『淮南子』がそれである。その内容は複雑多様、諸子百家から戦国的自由思想の伝統、また、処世や政治、天文や神話伝説まで集合されている。全体の基調は老荘的なものに貫かれその百科全書的な性格が人々をひきつけてきた。混迷の世を生きる現代人に贈る必読の人世哲学の書。

感想

老荘思想を基調にした雑家の書である『淮南子』を解説、分析したもの。編者である劉安の出自から、当時の社会情勢、思想界の様子まで幅広くアプローチしており、深い分析が行われている。僕は、老荘思想は、自然と人間を考えていく上できわめて重要な思想になると考えているけれど、その老荘思想を深く理解していく上で必読の書だ。

メモ

淮南子は、雑家の書として、ある意味、思想的にあまりきちんとした位置づけが与えられてこなかった。
淮南子をまとめたのは、淮南を治めていた劉安である。そのころ中央は儒教をいただき、少しずつ礼的秩序を教化していった。それに対し淮南では、中央の儒教とは違った思想を持つ人々が食客として集まった。戦国時代的自由思想が維持され、道家系の士や、神仙方術の士などである。

淮南子」は多くの人を経て逐次積み上げられてきた。

最後におかれた「要略篇」では、儒家的だったり墨家的だったり様々な思想を含む多様で雑多な淮南子を、「深遠な道」と「現実の事」の両方を追及しながら、老荘的な世界で統一しようとしている。観念的な立場を強調しながら現実主義の立場を失わない。
戦国時代に多様な思想が花開いたが、統一王朝が誕生するとともに思想の統一も進んだ。漢王朝儒学を据えた。淮南子は、道家の統一の場といえる。

乏しい中国神話の宝庫でもある。

「多様な現象を生み出す唯一の根源的実在としての道と、現象に即して多様な現象をつらぬく理法的あるいは原理的な道と。道家のいわゆる道には、この二つの性格があった。そして、それは、もともと『老子』の作者が考えた道と荘子の考えた道との相違であったろう」p171