不平等が健康を損なう

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不平等が健康を損なう
イチロー・カワチ ブルース・P・ケネディ
西信雄 高尾総司 中山健夫監訳 2004 日本評論社

内容(「MARC」データベースより)

たとえ裕福な国でも大きな所得格差が存在する場合には、国民の健康水準が低くなることを実証。アメリカンスタイルの資本主義を導入することの危険性について警告を発する。

雑感とメモ

 「社会内部における経済格差(アメリカで高く、日本で比較的低い)や、地域や職場における社会的結束(日本で高い、アメリカで低い)こそ、人びとの健康を左右する重要な要因なのだということ」p鄽を、各種データを用いて論じている。
 本書の主張は、機会平等はもちろん、結果平等もある程度は、政府の役割として施策が必要であることの強い根拠となるだろう。
 また、経済成長(消費の拡大)を重要視することが人びとの幸福につながるのか? という著者の問いかけは重い。
 その他、興味深い結論が書かれていてなかなか面白い本であった。詳細は↓にて。


「拡大しつつある不平等は、資本主義の成功にともなう副産物であるとしてかたづけられるものではなく、むしろ私たちはそれが経済発展によってもたらされるはずのさまざまな自由を脅かしていることに目を向けなければならない。その自由とは、貧困からの自由、病からの自由、民主主義的選択を行う自由、そしてすばらしい余暇活動を追求する自由のこと」p6


「人間は社会の中でみずからの相対的地位に関心が向いている」p46 「経済学者が考えている以上に、人間は社会における自分の相対的位置が気になる」p48 「人は世界を相対的にみている」p50
::例::平均所得が変化すると、主観的貧困の基準もそれに対応するように変化している


(給料格差はスターを生み出す一方で、職場の安定性や結束を下げる。特に、製造業の製造班など、互いの協力が要求される組織では有害である)p81


(経済格差の大きい社会ほど顕示的消費(贅沢品、見せびらかし品)が増える)


(他人に対する信頼感が強い人間や、社会への参加がある(社会関係資本)人間ほど、健康である、傾向が強くみられる)p151他