葉桜の季節に君を想うということ

葉桜の季節に君を想うということ
歌野 晶午 2003 文藝春秋

内容(ウィキペディアより)

いつものようにフィットネスクラブで汗を流していた成瀬将虎は、ある日後輩のキヨシから、彼が密かに想いを寄せる愛子の相談に乗ってほしいと頼まれる。
久高愛子は、轢き逃げに遭い亡くなった身内が悪徳商法業者・蓬莱倶楽部によって保険金詐欺に巻き込まれていた証拠を掴んで欲しい、家柄の手前警察には相談しにくいと依頼してきた。
同じ時期、将虎は地下鉄に飛び込もうとした麻宮さくらという女性を助ける。それがきっかけとなり、以後何度かデートを重ねる仲になる。
将虎の恋の行方と、保険金詐欺事件の真相究明、2つの出来事が交錯する。

雑感

叙述系のトリックがしかけられた小説。


トリックはなかなかみごと。叙述系のトリックがあるとは知っていたけれど、作者の張り巡らした罠にみごとはまった。最後の1ページの種明かしに衝撃を受けたのである。
軽く見直してみると、確かにヒントがちりばめられている。こういう風に、此まで見てきた世界がひっくり返されるのは、かなり愉悦だ。ただ、「種」を知っても物語に深みが生まれない。その点、同じ叙述系のトリックがしかけられた作品でも、イニシエーションラブの方が、ずっと優れていると思う。