夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦 2006 角川書店


【内容紹介(「BOOK」データベースより)】
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。


【雑感】
 文体が面白い。普通から少しだけずれた単語を選んで、文章を組み立てている。
 主人公の好奇心旺盛で自由な行動に相まって、その変わった言葉のつながりが、本作品に独特の浮遊感をもたらしている。ポンポンポンと。


 本作品には主人公が二人いる。自由気ままに世界を闊歩する無邪気な乙女と、彼女に恋心をいだきあとを追う乙女の先輩。
 自分の興味・関心にぐいぐいつき動く二人は魅力的である。しかし、恋が成就した暁には、先輩はその執拗なストーキングを止めるだろう。その必要性はもうない。だがそうなった先輩に、人間の魅力として何が残るのだろうか。私にはそれがイマイチ見いだせなかった。
空虚な主人公である。