ガダラの豚

ガダラの豚
中島らも 1993 実業之日本社


【あらすじ、アマゾンから転写】
内容(「BOOK」データベースより)
アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。日本推理作家協会賞受賞作。


内容(「BOOK」データベースより)
大生部一家はテレビ局の特番取材で再びアフリカへ旅立つ。研究助手の道満、スプーン曲げ青年の清川、大生部の長男納、テレビのスタッフ6名。一行はケニアウガンダの国境沿いを北上してスワヒリ語で「13」という意味の不吉な村、クミナタトゥに着いた。村民に怖れられる大呪術師バキリの面会に成功した一行は最大の禁忌を犯す。バキリのキジーツの少女を攫ったのだ。危機一髪。ケニアを後にする。日本推理作家協会賞受賞作。


内容(「BOOK」データベースより)
通訳のムアンギ、テレビクルーたち。6人もの犠牲者を出して大生部は娘を取り戻した。「バナナのキジーツ」の志織を奪いに呪術師バキリは東京に来ている。番組関係者の回りでは次々奇怪な事件が起こる。司会者嬢の惨殺、清川の変死。元・プロデューサーの馬飼は大生部一家と大呪術師バキリが対決する生番組を企画した。光と影、呪いと祈り。テレビ局の迷路でくりひろげられる世紀末スペクタクル大団円。日本推理作家協会賞受賞作。


【感想】
 けっこう分量のある作品だが、純粋におもしろく、あっという間に読んだ。


 アフリカの呪術社会を舞台背景にしているが、それは本当のアフリカを描いているのだろうか? 実際のアフリカを参考にしているのかな、という印象を受けた。


 「不幸と死のない人生がないのと同じように、呪術のない世界というのもまた、無い」と老呪師オミャピデは語る。そうなのだ、人の生きるところには人の(嫉妬の)感情が渦巻き、そして必ず呪術は在るのだ。日本にも呪術は在ったし在る。呪術は世界中にどこにでも在る。オミャピデの言葉はなかなか名言だ。


 呪いをプラシーボ効果(ほら、あれ、薬だといわれただの粉を飲んでも、体調が良くなったりする現象)で説明するあたりや呪術が法律のような側面をもっている例を考察してみせるあたりは納得。呪術だけでなくこれらは宗教にもいえるのだろう。人間の心の弱さというものもうきぼりにする。


 とまあ、こんな感じで呪術や超能力を暴いて見せたと思ったら、実際に超能力が出てきたりする。このどっちにもよらない中途半端さが本書の特徴か。まあ、超能力が出てきても、科学を信仰している僕にも不快なく楽しめたという意味では良いのかもしれない。


《20070808の記事》