都市ゲリラ・ミニマニュアル(都市ゲリラ教程)

都市ゲリラ・ミニマニュアル(都市ゲリラ教程)
カルロス・マリゲーラ


ネットサーフィン中、偶然見つけたアングラなニオイのぷんぷんする短文。ソースは以下。
http://hanran.tripod.com/index.html
全文、及び詳細な説明はリンク先を参照されたし。


内容は題そのまんま。都市ゲリラの方法・特徴・意義・その他あれこれについて。全体を俯瞰しつつ短めにまとめている。


 それにしても本書は本当に刺激的な本である。何しろこれに書いてあることは、たんに頭の中で展開したことではない。人の命をかけ、失敗したり、成功したりした中から導き出されたものだからだ。それだけ当時の硝煙のにおいがする。


著者はCARLOS MARIGHELLA。

「 カルロス・マリゲーラは1911年、ブラジル東部バイア州で生まれた。1930年、ブラジル共産党に入党し、アジテーター、オルガナイザーとして働いた。戦争の間を刑務所で過ごしたにもかかわらず、すぐに地位が上がっていき、1952年には党中央委員会委員となった。1953年に中国に旅行し、毛沢東朱徳に会った。

 1964年の軍事クーデター後、ブラジル共産党は地下に潜った。マリゲーラは、採用すべき戦術について党の他の幹部と意見が食い違い、結局、1967年、命令に逆らって、ハバナで開かれたラテンアメリカ団結に関する会議に参加し、党から分裂した。

 1967年の終わりにブラジルに戻ったとき、ブラジルには広範囲にわたる社会不安と経済的大変動があった。マリゲーラは武力闘争が革命軍と結び付く必要を確信しており、1968年2月にALNを組織化した。ALNの活動を指揮し、他の都市ゲリラグループ、特にVPR とMR-8運動とともに活動した。マリゲーラは1969年11月30日に警察の待ち伏せで殺された。ALN はカリスマ的な指導力組織力を奪われ、その死から1年の内に崩壊した。

 カルロス・マリゲーラは革命の方法についてのエッセイや論文を多く書いた作家であった。最も有名な作品『都市ゲリラ・ミニマニュアル(都市ゲリラ教程)』は1969年6月にサンパウロで書かれた。この本はそれ以来20の言語に翻訳され、全世界のテロ運動のハンドブックとなっている。これはイタリアの赤い旅団、ドイツの赤軍派、暫定派アイルランド共和軍の公式訓練マニュアルである。 本は60ページ以下であり、都市ゲリラ戦のさまざまな局面について扱っている40章に分けられる。大部分は、標準的な軍の戦術ノートのようにかなり正確に書かれており、見習いテロリストが重要なポイントを思い出す助けとなる完全なメモとなっている。この本はゲリラ戦略・組織についての簡潔な要約にとどまっており、革新的なものや意外なものは特にない。」

(リンク先より)


 ゲリラの定義など。

「ゲリラは、戦線を作らず、小規模の部隊に分かれ、会戦を徹底して回避して、小規模な襲撃や待ち伏せ、敵方の施設破壊等の後方攪乱によって戦争を継続する方法、そのような展開になった戦争、さらにそうした戦争を行なう組織を言う。」

「農村ゲリラ
 現代においてゲリラ戦の有効性を実証し目覚ましい成功をおさめたのは、毛沢東が率いた中国共産党の軍隊であった。彼は都市蜂起戦術を批判し、山岳を根拠地とする農村ゲリラをはじめた。背景には中国史に数ある農民反乱の伝統があったが、毛沢東は単純に農民の数をあてにするのではなく、険阻な山岳に士気の高いゲリラ軍が入って長期抗戦の体勢を整え、それを一般の農民が支援するというスタイルを編み出した。

 第二次世界大戦では、中国、ソ連ユーゴスラビア、フランスなど、枢軸国の侵攻を受けた諸国で占領軍に対するゲリラ戦が展開された。ヨーロッパのゲリラは、特にパルチザンと呼ばれた。これらのゲリラの主任務は、正規軍と連携し、戦線の後方で破壊活動や情報収集をすることであった。ただし、中国とユーゴスラビアのゲリラは山岳地から勢力を拡大して都市の争奪にまで乗り出した。

 第二次世界大戦の終了後、アジアとアフリカの植民地で独立運動が盛んになった。その中で、宗主国を相手に独立戦争をはじめるものも現れた。独立戦争のほとんどはゲリラ戦の形をとった。中でもアルジェリア独立戦争インドシナ戦争ベトナム戦争では、ゲリラ戦が重要な役割を担った。

 独立後、主としてアジアで、毛沢東の思想的影響を受けて革命を目指すゲリラが興ったが、大半が失敗した。中国の影響下にはないキューバカストロゲバラの反独裁ゲリラが成功をおさめた。その後、中南米ではキューバの影響をうけて独裁や軍事政権に反対するゲリラが起こされた。ニカラグアのサンディニスタ革命など成功するものもあったが、多くは敗北するか、長引く内戦ですべての当事者が疲弊する結果に終わった。1990年代になるとその一部は麻薬取引に資金源を見出すようになった。

 アジアとアフリカには、国内少数民族による独立要求が多くある。その一部もゲリラ戦の形で戦争を行なっている。

 さらに、強力な外国軍と戦うイスラム・ゲリラがある。パレスチナのゲリラは、アラブ諸国イスラエルに敗北してから、イスラエル領内に越境攻撃を行なった。また、アラブ諸国の一つであるレバノンではイスラム原理主義組織ヒズボラが同国南部を占領していたイスラエル軍に対してゲリラ戦及び自爆攻撃を展開し、2000年に同軍撤退という一定の成果を上げた。アフガニスタンでは侵攻して来たソビエト連邦アメリカ合衆国に対してゲリラ戦が起こった。2003年現在にはアメリカ合衆国に対するゲリラ戦がイラクで展開されている。」

「都市ゲリラ
 都市ゲリラは、1960年代にブラジルのカルロス・マリゲーラが提唱したもので、都市において軍隊と警察に間断なく小襲撃を加えることである。ゲリラはふだんは住民にまぎれ、住民に匿われて潜伏している。都市ゲリラは、活動の開始時こそ世間の耳目を集めたが、小規模で散発的なテロを超えることはなかった。例外的に成長したのがウルグアイのトゥパマロスであったが、これも激しい弾圧を受けて頓挫し、いずれも名ほどの実を伴わない結果に終わった。先進国にも都市ゲリラを標榜し実行した組織は多いが、それだけで戦争の一類型というほどの規模になったものはない。」

ウィキペディアより)


【雑感】
 古代中国では、孫子という兵法書が書かれた。戦争を起こすにおいて、また戦争そのものの心構えや注意点が簡素にまとめられている。これはいわば、現代版 裏 孫子か。平和でかつ豊満な日常にぷかぷかと浸かっている私たちには都市ゲリラなど、ほとんど縁がないだろう。そしてそれについての知識も不要に思えるかもしれない。


 しかし、そんなことはないだろう。過去、そして今も、世界のどこかで民衆に真の平和と幸せと平等がくると信じて、ゲリラ活動やテロ活動を行っている人々がいるのだ。しかも全く無視できない人数の支持を得ている組織もたくさんある。これは現代の資本主義や独裁政権に粉砕されたある世界の一面である。歴史や立場、主義というものはその人たちにしか完全には分からないものだけれども、途方もないその熱意はくみ取ることが出来るし、くみ取っていかないと本当の歴史というものには(あるとすればだけれども)近づくことが出来ない。そして、両方の状況にふれてこそ両者はまともな話し合いを続ける可能性が生まれる。傍観者はより公平な判断を下す余地が生まれる。


 今から40年ほど前、むせかえるような南米のジャングルや混沌猥雑とした都市で、本当に革命を起こそうとし、また成功させた人々がたくさんいたのだ。私たちはそのような歴史を無視してはいけない。どのようなものであれ、人間社会の行った行為というものは記録、記憶され後世の人々に読み継がれるべきものだと思う。


 なぜなら歴史が人の行動の辞書となり得るからだ。人が知りたいのなら、人の行ってきたことを見ればいい。歴史こそが人類の行いの辞書たり得る。だからヒトを、そしてその行動を知りたければ歴史を参照すればよいのだ。


 ただ、本当の歴史というものは現在の科学技術力や人間の規範では存在し得ないので注意が必要だ。誰が歴史を書く?現段階では人間が書くしかない。そんな、個人や集団の主観の入った歴史なんて、疑って見る他ない。すなわち歴史は疑って見る他ない。すべての現象を歴史として把握できる?現科学技術ではすべての現象やすべての人間の心象を把握することは到底不可能だ。そんな、ごくごく特定の現象やごくごく特定の人間の心象しか把握してない歴史なんて、疑って見る他ない。すなわち歴史は疑って見る他ない。


 上のような注意点をふまえたうえで、人は出来るだけ歴史という名の完全な辞書を目指し、それを読むべきだろう。人の行動を知る為に。だから人類は、人類の歴史を学び、解明し、考察するのだ。私たちはその為にいくらかの努力を講ずるべきだし、未来の人々にその手助けをするべきである。人とは何か?その終わりなき問いに歴史は重大なヒントを与えてくれるだろう。


【都市ゲリラの特徴】

 「都市ゲリラの主要な任務は軍国主義者、軍部独裁政権とその抑圧部隊を攪乱し、疲労困憊に落とし入れ、士気を喪失させることである。それと同時に、北アメリカ帝国主義の手先である北米人と外国人支配者、およびブラジルの上流階級の富と財産を破壊することである。」

 特筆すべき点をいくつかあげる。まず、都市ゲリラは少数のグループを単位とした、かなり自主的自立的で活発なものであり、イニシアチブをとることを強調している点。これは国の抱える軍隊と真っ向から対立する特徴だろう。国の軍隊が部隊単位で勝手に動いたらとんでもないことになる。その点をしっかり押さえ、部隊が一致団結して個々の仕事を行う軍隊が、強力で手強い軍隊と見なされるに違いない。しかし、都市ゲリラにおいては逆で、まず、自主自立的にどんどん行動を起こすことが求められる。彼等に必要以上の統率はいらないようだ。まあ、確かに、彼等の目的(任務)を見れば、そのようにいえるだろう。

「作戦司令部から指示された優先的な目的がない場合はいつでも、どのグループでも、銀行襲撃および独裁制の手先、北アメリカのスパイの誘拐や処刑の決定、あらゆる種類の宣伝や敵に対する神経戦などを総司令部に相談なく行ってよいということである。戦闘グループは、上部からの命令があるまで行動しないようでは駄目である。戦闘グループを組織し、行動することを望むなら、どのような都市ゲリラ個人でも、自分の判断で行動すればよい。行動することによってその戦闘グループは組織の一部になるのである。」「都市ゲリラは軍隊ではなく、意識的な分散した小さな武装集団である」「ごく少数で、おのおの自給自足して、独自に作戦を展開する多くの武装グループで、あらゆる側面から攻撃をかけること。国全体で作戦を展開する堅固な一つの組織にすれば、敵に集中した軍事的攻撃の機会を与えることになり、その結果都市ゲリラは破壊され、鎮圧されてしまう。それよりも完全にバラバラに散らばった組織として、軍部独裁の追跡を分散させねばならない。」「ゲリラ全員が互いに知り合うこと、あるいはあらゆることを知ることは許されない。各人はただ自分の任務について知っていれば十分である。この鉄則は、都市ゲリラの安全の上でも、初歩的な基本事項である。」


 次に、都市ゲリラは自給自足すべきものであるという点。現地(戦地)で食料や燃料、武器弾薬を確保しろということなのだが、これは孫子にも指摘がある。しかし、近代の戦争においては当てはまらないと思う。そんなことをしたら、世界中の国から大変な非難を浴びるだろう。もっともこれは、アメリカにしろフランスにしろ、正規軍においてである。非正規軍の実情がどうなのかは知らない。

「現金、武器、弾薬、爆薬などは自動車と同じように強奪すべきである。都市ゲリラは見つけしだい銀行と兵器庫を襲い、弾薬と爆薬を奪うべきだ。」「強奪はわれわれの兵站の組織化の第一歩である。それは武装と機動化を保証する。」「銀行を襲撃するときは、警備員の武器を強奪するための注意を怠ってはならない。出納係、会計係、支配人などの武器も見つけたら即座に強奪しなければならない。」


 また、機動性が高く、軽装であるべきという点。これは、政府軍と真っ向から戦ってもかなわないからである。物量は政府軍にどうしても劣る。それを軽装による機動化でカヴァーしようとしているのだ。

「都市ゲリラ戦争の原動力は、独裁政権の軍隊や警察部隊との武力衝突である。この衝突では警察のほうが力は優っており、ゲリラの方が弱い。しかし、都市ゲリラのほうが力が弱いにもかかわらず、攻撃側になることだ。軍隊と警察側は攻撃されると、はるかに強力な部隊を集めて都市ゲリラを追撃し、壊滅しようとする。もし都市ゲリラが緒戦の優位を勘定に入れ、それを自らの火力の弱さと物資の欠乏を補うのに利用することを知っていても、彼にできるのは敗北を避けることだけである。緒戦の優位とは次のようなごとである。?、敵の意表をつくこと。?、敵以上に戦場の地理を知ること。?、警察やその他の抑圧部隊に優る機動性をもつこと。?、敵を上まわる情報網を持つこと。?、状況を適切指揮して優れた判断力を示すこと。そうすれば味方は皆勇気づけられ、躊躇などしないし、他方、敵は放火を浴びて応戦できなくなるだろう。」「機動化についてこうりょしておかねば、それが行動を失敗に導くことにもなりかねない。機動化は真剣に考えられねばならないし、今後の事態も含めて、責任を持って遂行されねばならない。」「警察や軍部ファシストは自らの威厳を保つために、銃やその他で体の隅々まで重装備して攻撃をかけてくるだろう。それに対し都市ゲリラは、簡単に運べる軽火器を用いるので、つねに正面戦を避けて最大限のスピードで逃走できる。都市ゲリラには攻撃し、すぐ退却する以外に任務はないからだ。もしわれわれが過重な弾薬や武器で重装備するなら、貴重な機動性を失い、完全な敗北に身をさらすことになるだろう。」


 さらに、あくまで都市ゲリラというのは、政府軍と真っ向から戦う農村ゲリラを補助、支援するものであり、したがって敵の士気低下や戦力の分散、疲弊が目的であるという点。これは指摘されないとなかなか気づかないかもしれないが、極めて重大な都市ゲリラ特徴である。これこそが都市ゲリラの都市ゲリラたるゆえんであり、たぶん都市という濃密な空間の誕生と情報流通の発展によりそういう概念が生まれてきたのだろう。あくまで都市ゲリラは農村ゲリラを補完するものなのだ。国家の正規軍隊には見られない都市ゲリラの特異的な戦術特徴はこの点から生じているといえる。もし、農村ゲリラの育成、発達が不十分だった場合、きっと都市ゲリラはどんな底辺の住民からも見放されるだろう。現実的に現体制を崩壊させる手を提示せずにインフラを破壊したり、警察にちょっかいを出しても誰も支持はすまい。なぜならそのとき都市ゲリラは、単に社会的基盤を破壊するものでしかないからだ。ゆえに、特に都市ゲリラ上層部において農村ゲリラの誕生を促したり、緊密な連絡を取っていたのではないか。このように都市ゲリラというのは極めて危なく繊細な戦略を要求される存在だったのだと思う。一歩間違えば、すぐにでも万人の悪者になり下がるのだから。

「政府軍との戦闘においては、公然とした戦闘や決定的な戦闘は避けるようにし、即座に結果がでる短時間で敏速な攻撃に限定すること。」「胎動しつつある農村でのゲリラ戦争を支援し、民族解放の革命軍を形成することに援助を与えること。」「根本的なことは、ゲリラ活動によって敵が物質的・精神的打撃をうけ、弱体化することである。」「都市ゲリラの叛乱の発展のなかから、農村ゲリラ闘争を開始することが可能となる。」


《20060730の記事》