図解雑学 クラウゼヴィッツの戦争論

図解雑学 クラウゼヴィッツ戦争論
川村康之 ナツメ社 2004 9 8


 ナポレオン戦争に衝撃を受けたプロイセン将校によって書かれた戦争論。その一番重要なテーマは「戦争とは他の手段をもってする政策の継続であり、政治的目的を達成するための手段にすぎない」。すなわち戦争とは政治の下にあり、常に政治的目的に従って行わなければならない、というのだ。戦争すること自体が目的となってしまい、悲惨な末路をむかえた旧日本帝国にも当てはまる指摘だろう。


 もう一つ面白い着眼点があるが、それは攻撃には限界点が存在するということである。攻撃側は攻撃という行為においても防御側より不利であるし、進撃すればするほど、その補給線の維持に大きな戦力を必要とする。そのため攻撃側の優勢が逆転する限界点が存在するというのだ。よって、攻撃の限界点を見極め、有利な状態で防戦へ転換しなければならない、と説く。これはナポレオンや旧日本帝国軍など、多くの例に見える失敗の原因だろう。


 たぶん日常じゃ役に立たないと思うけれど、なかなか面白かった。核兵器や戦闘機、潜水艦、情報衛星、ロケットなど近代兵器のある現在ではどのような戦争論が説かれているのだろうか?


 様々な兵器のある現代であっても、「戦争とは他の手段をもってする政策の継続であり、政治的目的を達成するための手段にすぎない」であることには基本的に変わりないだろう。しかし、軍需産業の大きな影響力のある現代、もっと複雑、あるいはもっと単純な様相を呈しているに違いない。


《20060209の記事》