日本の敵 よみがえる民族主義に備えよ

日本の敵 よみがえる民族主義に備えよ
宮家邦彦 2015 文藝春秋

内容、カバー折口より

戦後70年を経て、世界では未曾有の大波がうねり始めている。日本はこの激流をいかに生き延びるのか。安倍晋三が信頼を寄せる「本物のインテリジェンス」が冷徹な眼で分析した戦略論。冷戦を勝利に導いた伝説の戦略思考家A・マーシャルの「NA(ネットアセスメント)」。その謎に包まれた真実も今明らかに。

感想

著者は次のように指摘している。
「「共産主義」という象徴的なライバルを失った「自由民主主義」の勝利はいずれその「国際性」を埋没させ、逆にこれまで「民族主義」を封じ込めてきた「大義名分」を失って、一九四五年以前の「ナショナリズム」を再び野に放つことになるのではないでしょうか。」
「国際主義を超える価値として、「国家、民族」が国民の中に共有される」

これらはシンプルであるが、冷戦後の国際情勢の骨子を説明するとともに、今後の推移を考えるうえでも重要な指摘だと思う。筆者は、最近のロシアや中華人民共和国の威圧的な軍事行動やISの伸張をこの流れで説明している。

社会の一面を大きく捉えるとともにシンプルである。優れた視点、骨組みではないか。

メモ

・(今の日本には、敵性国家に対する政治・経済・軍事・社会・文化的趨勢に関する直感力に優れたジェネラリストによる総合的な分析能力が必要。)

・(米国の強さの秘密はその広い国土、豊富な資源、他民族性とともに、常に新たな移民を受け入れ、その人々の知的爆発が広大な国土と豊富な資源を活用するシステムをもっていること。また、歴史の節目において、自由・独立・平等・基本的人権といった普遍的価値を体現する存在として君臨してきたこと。)

「誤解を恐れずに申しあげる。自衛隊は「リスクを取ってなんぼ」の集団だ。そのために人材を集め、厳しい訓練を施し、十分な装備と必要な情報を準備した上で、周到かつ臨機応変に作戦を実行する。
 勿論、彼らの生命を最も心配するのは彼ら自身である。彼らが犠牲になっては仕事にならないからだ。だからこそ、国民は彼らに正しい使命と最大限の名誉を与えるべき」