殺戮にいたる病

殺戮にいたる病
我孫子 武丸 1992 講談社

あらすじ(「BOOK」データベースより)

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。

雑感

えぐい。
トリックはなかなかみごと。叙述系のトリックがあるとは知っていたけれど、作者の張り巡らした罠にみごとはまった。最後の1ページの種明かしに衝撃を受けたのである。
軽く見直してみると、確かにヒントがちりばめられている。こういう風に、此まで見てきた世界がひっくり返されるのは、かなり愉悦だ。ただ、「種」を知っても物語に深みが生まれない。その点、同じ叙述系のトリックがしかけられた作品でも、イニシエーションラブの方が、ずっと優れていると思う。
いや、端的に言って、本作は物足りない。