「茄子 アンダルシアの夏」、「茄子 スーツケースの渡り鳥」

超おすすめ!
「茄子 アンダルシアの夏」(黒田硫黄原作、高坂希太郎監督、2003)
「茄子 スーツケースの渡り鳥」(黒田硫黄原作、高坂希太郎監督、2007)


【二つの作品の感想】
二つとも、ロードレーサーのぺぺを中心とした物語。


二作とも、スピード感がある。
切れのあるカメラワーク。見ていて気持ちがいい。
苦しみながら躍動しながら、ロードサイクルをこいで前に進む登場人物たち。
クルマのようにサーと走るんじゃなくって、空気や道路をグッグッと前に進む感じ。粘っこい空気の中を人間の力で、筋肉の力で、前に押し出ていく感じ。
アタックをかけるときの表現には、特にそれを感じた。
自転車特有の感覚がよく表現されていると思う。


ロードレースの様子をはじめて知った。チームを組んだり、手厚いサポート体制があったりと。
本物のレースも見てみたいなあ。


アンダルシアの、あるいは日本の、美しい世界の中を、呼吸が荒くとも、新鮮な空気をいっぱい吸ってるんだ。本作の登場人物は。見ていて、すっごくうらやましいと思った。


本作を見てると太ももが無性にうずいてくる。グワッて感じの顔をしながら、本気で自転車をこぎたくなる。見ている人をこんな気持にさせるというのは映像表現として、最高の成功だろう。


とにかく、その躍動感溢れる映像を是非見てほしい。


【「アンダルシアの夏」の感想】
めちゃくちゃ面白かった。脚本も映像も演出も、とてもすばらしい!
描かれるのは、レース最後の40分。
そこに主人公ペペやアンダルシアの人たちの気持ちを凝縮させている。
ペペがロードレーサーを目指すようになったきっかけ。ペペ、ペペの兄、その妻、三人の微妙な関係。アンダルシアの自然。アンダルシアの人々の美しい日常。など。
レース最後の40分という極めて限定した時間と空間の中に、アンダルシアの自然や人々の喜びや悲哀をつめんこんでいるのは、実に見事という他ない。
余計なことをギャーギャー語らせないで、間や目の動きでたくみにみせてる。
幸福と偶然と運命のつまった40分間。


【「スーツケースの渡り鳥」の感想】
前作に比べると普通の脚本ってな印象を受ける。
ザンコーニの行動など、いまいちはっきりしないものが多い。
人生に悩む男たちの逡巡と決意とプロのレースって感じ。
ヒロインが空気。ヒロインは豊城ひかるという固有名詞をもった女じゃなくても、かわいかったら誰でもつとまっただろうってな位置づけ。だから空気。