夏は馬車に乗って

ある日のこと。

青年はその女性に、理科の問題の解き方を教えてもらおうとしました。彼女は問題集を受け取り、問題を見ましたが、どうやら彼女にもそれは難問のようです。顔をしかめながら見ています。
しばらくしてふいに彼女は、顔を上げ心配そうに言いました。


「ねえー、そういえば今日、Bちゃんの顔色、悪くなかった?
大丈夫かなあ。」


青年は、彼女の持つ問題集に目を落としたまま、さらっと言いました。


「そう?
俺、Bさんとあんましゃべったことないから、そもそも普段の顔色が分からん


≪バンッ!!≫


わ。」


言い終わるか終わらないかするうち、彼女は突如、手にしていた問題集を机の上に放り投げました。そして、ア然とする青年に向かって、こう言い放ったのです。


「そういうところ、きらい。」