雨が好きだ。

雨が好きだ。


窓から侵入してくる冷たい空気。いや、冷気。
窓から見えるのはどんよりと重たい空。
ポンポンポンと、雨が、屋根やコンクリートへ規則正しく落ちる音。
そして何よりあの雨のにおい。雨のにおいは本当に僕を興奮させる。土地の湿るにおいなのか、或いは、植物の湿るにおいなのか。


静寂。
雨だけが唯一、動くものであって、それ以外のものはまるで、呼吸をすることすらやめてしまったかのような灰色の世界。


こんな日は、まっ黒なレインコートをしっかり着て、道に立つ。
大きいフードもかぶって、雨ぐつもはいて、手はポケットにつっこんで、、、そう、目だけが世界にのぞいていればいいんだ。


そういう妄想に、どうしようもなく囚われて胸がきゅんきゅんする。


僕は雨が好きだ。
こんな日は蛍光灯の音すら、ジジジとうるさい。
だから僕は、電気を消して薄暗闇のなか。
からだのすべてをつかって、あめをにんしきする。