読んですぐに身につく「反論力」養成ノート

読んですぐに身につく「反論力」養成ノート
香西秀信 2009 亜紀書房

内容、出版者ウェブサイトより

代表的な議論の型を知り、例題をいくつも解くうちにめきめきと反論する力が付くこと請け合い。これでもう、“泣き寝入り”“だんまり”はしなくなる!

感想

 香西先生特有のウェットに富んだ文章で読んでるだけでおもしろい。文章を追っていておもわずニヤニヤしてしまう。
 またテンポよくいい切る文が多く、著者が問題を設定するなかでは、それは確かに正しい。うじうじと言い訳をしないこの舌鋒の鋭さも楽しいのだ。

 内容はこれまでの著書に重なる部分が多く、しかしそれは思考力を高めるうえで重要なことなので、復習のつもりで読んだ。【類似からの議論】、【定義からの議論】、【因果関係からの議論】を中心に紹介し、その議論の構造や反論のポイントを論じている。

メモ

・議論が生まれるのは意見が対立するから。そしてそうして意見が対立しうるのはとどのつまり、どちらの案にも分があり、結果がどちらでもよいから。

・議論に勝った意見が「正しい意見」。そして議論の技術を身につけているから議論に勝つ。つまり「議論に強いからこそ、常に正しく考える」p17

・力をもてばもつほど議論から得られるものは減る。なぜなら議論などしなくても自分の意見が通るから。だからほんとうの強者は議論する必要がない。

そのような議論の必要ない強者になるためには議論の技術を身につけ人生を自ら切り開く必要がある。

・意見は、既存のそれとは対立する別の意見への反論という性質をもっている。ゆえに「反論」は議論の本質。反論の技術の習得が、議論の技術を身につけるポイント。

・議論の訓練をするときは、「類似からの議論」の使い方から学習するとよい。なぜなら・・・
1、日常生活でよく使うから。
2、議論構造が形式的に明示しやすく、根拠が判然としていて反論方法も一義的に定まるから。
3、類似からの議論を考えるにはものごとの類似点と差違点を見極めなければならないが、それは人間の根幹であり、類似からの議論をあつかえばそのよい訓練になるから。

・人間が説得的と感じる論証方法は限られている。よってその少数の議論の型をあらかじめ習得しておけばよい。

・「思考力」ととらえるから何をすればよいのか分からなくなる。「力」ではなく「量」と考える。ものの考え方の量、つまり議論の形式を増やすことが重要。