人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する

人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する
マーク・ミーオドヴニク 松井信彦 訳 2015 インターシフト

内容、出版者ウェブサイトより

すぐそこにある材料の、内なる驚異の宇宙へ

・ガラスが透明なのはなぜ?
・スプーンには味がないわけ
・世界一軽いモノって?
電子ペーパーのインクの秘密
・映画も音楽もプラスチックのおかげ
・チョコレートの美味しさの元
・・・
私たちの身近にある材料の驚くべき秘密を明かす、超話題作。
世界16ヵ国で刊行の大ベストセラー!

感想

身近にある素材、「鋼鉄」、「紙」、「コンクリート」、「チョコレート」、「泡」、「プラスチック」、「ガラス」、「グラファイト」、「磁器」、「インプラント」をとりあげ、その誕生から利用の歴史、素材としての特性、それを生み出す原子構造などを解説している。
本書の特徴は単に重要な素材について述べているにとどまず、著者自身の素材との関わりを出発点にしていることだろう。そうして独自の経験と視点をもとに、素材に純粋に驚き、素材をいつくしむ著者の気持ちが華をそえているのである。

メモ

・素材は非常に重要な存在。人類が発明し発展させていった素材が、社会をかえ、人類を人類たらしめている。

・鉄筋コンクリートについて
 コンクリートは安く大きな基礎を作れるが、引っぱられる力に弱い(ひびが入ってしまう)。しかしそこにねばり強さをもった鋼鉄の輪を埋めこむことによって弱点が解消された(コンクリと鋼鉄は膨張率が同じだったので温度変化があってもひびが生じることは少ない)。それが鉄筋コンクリート
 鉄筋コンクリートは頑丈で火や風や水に強く、そのうえダントツに安い素材。保守もほとんど要らない

・ガラス以外のもの(透明でないもの)に光が当たると、そのエネルギーによって電子が動き、光はそのまま吸収される。
一方ガラスが透明なのは、可視光線にガラスの電子を移動させるだけのエネルギーがないから。ただ原子内部を通り抜ける際に影響を受け光は曲がる。これが屈折。

・中国人と西洋人を比べると、材料技術に関する知識は中国人のほうが凌駕していた。紙や木材、陶磁器、金属の材料技術に関する知識はローマ帝国崩壊後1000年にわたって中華世界のほうが優位だった。しかしガラスの技術については西洋のほうが優れていた。西洋世界でガラスはワイングラスやステンドグラスで利用された。このガラスに対する関心や技術が望遠鏡や顕微鏡の発明にいたり、科学革命につながった、と考えることもできる。

・素材は原子組成だけでその特性が決まるわけではない。並び方を変えるだけで性質が劇的に変わる場合もある。ダイヤモンドとグラファイトのように。

・素材は人間の欲望を複雑に反映したもの。