人を動かす

人を動かす
デール カーネギー 山口 博 著 改訂版日本語訳1999 創元社

内容、出版者ウェブサイトより

人間関係の古典として、あらゆる自己啓発本の原点となったD・カーネギーの名著。常に机上において読み返す本として、重厚で華麗な装丁にあらため、四六判・上製(ハードカバー)とし、本文も読みやすく組み直した。本書は、社会人として持つべき心構えを興味深い実例をもって説得力豊かに説き明かして類書の追随を許さない。深い人間洞察とヒュウマニズムを根底に据えた感動の書。聖書につぐ世界的ロングセラー。

感想

自己啓発本として大変有名なもの。

・私自身、最近仕事でイライラして感情的な言動をとってしまうことが多く、反省しながら本書を読んだ。

・本書には人間関係や仕事をよりよくしていくうえでポイントになることが書かれている。例えば、人の名前を覚えて積極的に使おうや、相手に関心を向けて声をかけまた、ほめられる点を見つけ積極的にほめよう、である。これらは単純な効力でどんな場面でもひろくつかえるだろう。

しかし、なかにはもう少し留保の必要な主張もあった。「議論をさける」や、「相手の誤りを指摘しない」、といったたぐいである。これらは字面そのままの主張を本書はしているというよりも、「直接的な」議論を避け、自分の都合の良い方に議論を誘導するや、相手の誤りを指摘する際は相手の顔をたて婉曲的に述べたりほめることとセットで指摘するべき、といったところを意図しているのだろう。もう少しこれらの点をうちだしてもよかったと思う。

本文でも述べられてはいるが、ざっくり主張をまとめたものではこの留保が落ちてしまっている。私はこの留保こそが大切なのではないか、と思ったしだい。なぜなら、著者は物事をよりよくしていこうという正当なものに主眼をおいているのであり、たんに人とうまくつきあっていくことだけにはおいていないので。

・具体例がたくさん紹介されているが、統計的なデータや実験結果もほしい。実証的根拠が求められる時代だ。

・さきほど「本書には人間関係や仕事をよりよくしていくうえでポイントになることが書かれている」、と書いた。ただフト思うのは、人間関係や仕事をよりよくしていくのは、どうしてか? そして人間関係をよりよくしていくのはそれはそれでよいとして、どのように充実させていくべきか? ではないだろうか。

仕事をするにしても人間関係をよりよく円滑にしていくにも、私はそれを目的に生まれたわけではない。コミュニケーションオバケになりたくて生まれたわけではないのだ。ほとんどの人もそうだろう。もちろん仕事も人間関係もとても大切だが、そのなかに自分の「個」を見出しそしてそれを成長させたり、友人との間にうわべでない何でも言い合えるような信頼関係を築いていくことこそが大切なのだと思う。
本書を大いに参考にしつつ同時に、自分の在りようを見つめることも考えるべき本である。

メモ

・たんに非難するだけでは、相手の行動を変えるのは難しい。ほめることとセットで批判したり、自分のミスも認めたり、婉曲的に批判したりと、相手の顔をたてながら批判する必要がある。

・人とうまく関係を築いたり彼・彼女を動かすには、相手に「自己の重要感」をもたせることが必要。社会や組織にとってなくてはならない重要な人材、価値ある人材であると思わせるのである。

・相手の立場にたって、相手の欲求を喚起すると、人を動かすことができる。自分で思いついたようにしむけられるとよい。

・相手に感心をよせる。笑顔で接する。名前は当人にとって最も快い大切な響きをもつ言葉、相手の名前を覚えて繰り返し使おう。聞き手にまわろう。誠意をこめてほめる。道徳心にうったえる。競争意識を刺激する。期待をかける、よい評価を与え大いに元気づけると評価の通りに行動しようとする。