真実 新聞が警察に跪いた日

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真実 新聞が警察に跪いた日
高田 昌幸 2012 柏書房

内容、カバー折口より

甲84号証――。北海道警察の元大幹部が裁判所に提出したA4判で四〇〇ページ近くもある膨大なその証拠文書には、裏金報道をきっかけに厳しく対立した北海道警察との関係修復を図ろうとする北海道新聞社の幹部らの「秘密交渉」の一部始終が詳細に書き記されていた。

感想

・北海道県警、そして北海道新聞といえば、両者とも絶大な権力を保持する巨大組織である。
本書の特徴であり、その最大の売りというか、すごいところは、そのどでかい力をもった両者の裏取引が、そのままの生々しいかたちで、しかも事実として担保された状態で紹介されている点である。

北海道警察北海道新聞の両幹部は、お互いの犯罪やミスをごまかし合おう、あるいは相手より優位に立とうと秘密交渉を行っていた。本書にはその実際のやりとりが、録音資料を書き取ったものとして、実に生々しく紹介されている。相手の弱点をつき、押したり引いたりしながらのやりとりはみていて目を背けたくなる。警察も新聞社も、公共性の極めて高い組織にもかかわらず、両幹部が考えているのは自ら保身、自らの組織の保身ばかりなのだ。

また、「陰謀」のうわさはかまびすしいが、本書はその「陰謀」のやりとりが、裁判の証拠として提出されており、そういう意味では、単なるうわさの域を超えた、かなりの程度、真実性の担保されたやりとりなのだ。「北海道警察の元大幹部が裁判所に提出したA4判で四〇〇ページ近くもある膨大なその証拠文書」は録音を元にしており、また証拠の内容自体に対する新聞社の反論は本書にはほとんど記されておらず、本書に記された両幹部による秘密交渉は事実と考えてよいだろう。

・社会のなかで生きる人、組織のなかで生きる人、すなわち全ての人に強くおすすめできる本である。事実は小説より奇なり。交渉内容も露骨だし、両組織の幹部間のやりとりにより、現場の情報もつつぬけ。組織は組織の保身ばかり。こんなあからさまなバーターが実際に行われているのだ。
世に広まっている情報も、あるいは広まっていない情報も、そういう交渉の果てに明らかになっているのではないか?

北海道警察は裏金をつくり、一方の北海道新聞は横領した社員の存在をきちんと公表せず、処分も甘かった。そういう点で両者すねに傷があったのである。

そんななか、北海道新聞が掲載した、麻薬取引の泳がせ捜査失敗を主張する記事の取り消し謝罪と、横領に対する北海道県警の強制捜査回避を天秤にかけて秘密交渉が行われたのである。

・本書からは、調査報道ではなく、お上の発表報道やお上のリークにたよる、マスメディアの問題点も浮かび上がっている。