おばあちゃんの畑

僕は旅に出た。
僕は、自分自身を捜しに旅に出た。


降り立った駅。
寒い日。
黒づくめのコート。
とその群れ。
ポケットに手をつっこんで首をすくめて足早に歩く人。


うつむきながら歩く僕を迎えたのは、畑だった。
おばあちゃんが耕している畑だった。
おばあちゃんの通り過ぎた後は、湿っていて、やわらかくて、ほかほかして、ふわふわしていた。
耕された土はとてもきれいな黒だった。
土のいいにおいがした。
土を耕す規則正しい音がした。
僕の内蔵が、あの土に触れたいと言った。


僕は旅に出た。
自分自身の救いのために旅に出た。